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「3月11日によみたい本」

東日本大震災から10年。
奥付に2011年 初版、2021年 初版と刻まれた

​2冊の絵本を紹介します。

​2021 March

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「あさになったのでまどをあけますよ」

 荒井 良二  作・絵

 偕成社

希望に満ち溢れた朝の連なりが豊かな色彩で描かれ、読み手の心に迫ってきます。

街の風景や山々、そして、海。どこかで見たことがある、いつかの自分が暮らした街。

2011年の夏、東北出身の荒井良二さんは、被災地で何度もワークショップを開催する中で、自分たちの役目は「朝になったらカーテンを開けるような、日常の感覚を少しずつ呼び戻すこと」だと思ったそう。その想いがそのままタイトルとなった一冊が本書です。

 

震災をビジュアルとして出さないことを徹底しながら、長い間読み継がれる美しい絵本を作ることで、2011年という奥付が刻まれた本書は、震災を風化させない役目を担い続けています。

 

祈りに満ちたこの本がこれからも読み継がれ、あの日のことを心に留めておけるように。

私たち うたたねBOOKSも、祈りと共に紹介し続けていきたいと思います。

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「ひばりに」

 内田 麟太郎 詩

 うえだ まこと 絵

 アリス館

あれは何年前だったか。3月11日。

被災して家族を亡くした方のインタビューがTVから流れてきました。

「時が経てば、悲しみは薄らいでいくと言うけど、降り積もるようだ」

その目を見た途端、言葉を聞いた途端、わたしは涙をこらえることができませんでした。

どれほどの悲しみなのか、わたしには決して計り知ることができないものだとも、普遍的な全体の悲しみのようにも思いました。そしてその悲しみを前にわたしはあまりにも無力だとも思いました。多くのかけがえのないものが奪われたその事実を、手も足も出ず、呆然と見つめる非被災者としての悲しみもまた、降り積もっているのでしょう。

どこかで、誰かが、降り積もる悲しみに埋もれてしまわないように、ほんのわずかでもその悲しみを溶かすことができるものがあるのなら、それは一人ひとりが人ひとり分持っている、ぬくもりなのかもしれない。そう思って祈ることが、わたしにとって救いでした。でもわたしは、祈りの言葉も、届ける方法もわかりませんでした。

あれからまた数年。あの日から10年。言葉にできない気持ちが、「ひばりに」という一冊の絵本になりました。わたしや、誰かの、伝えたい、届けたい思いを叶えるために。

悲しみを抱えて生きる誰かのもとへ、ちいさな風を吹かせるために。

 

どうか、どうか、届きますように。(ジ)

​ちいさなおはなし

ホープくん     giraffe

 

 

ぼくは ひとりで うまれて こなかった。

いつだって きみが いっしょだった。

 

 

ちいさな てのひらに きみを にぎりしめて

うまれて きたんだ。

 

ぼくの ちいさな ひかり。

 

 

 

ぼくは きみに なまえを つけた。

ホープくん。

 

「きぼう」って いみ さ。

 

 

 

きみは ぼくを てらす。

ぼくは つきのように かがやく。

きみは ぼくに よりそう。

ちっぽけな あかりの ように。

 

 

 

ぼくは きみを みうしなう。

なんども きみを みうしなう。

 

 

だけど きみは かげのように やってきて

ぼくに しがみつく。

 

けっして ぼくを はなしは しない。

 

 

 

ほんとうに すべてを うしなったかと おもったんだ。

 

まっくらで もう なにも みえなかった。

きみの すがた さえも。

 

 

ぼくは なきながら きみの なまえを よんだんだ。

 

 

 

まっくらな かえりみちで ぼくは きみを みつけたよ。

 

 

 

なみだの うみで きみを みつけたよ。

 

 

 

さしのべられた てのなかに きみを みつけたよ。

 

 

 

あたたかい スープの なかに。

 

 

 

「なんだよ ずっと ここに いたのに」って

きみは わらう。

 

 

 

ぼくは いきるよ。

きみと いっしょに。

 

 

ほんとうに ひとりぼっちなんて

そんなこと ないから。

 

きみが どこにも いなくなるなんて

そんなこと ないから。

 

 

 

ぼくは きみを しんじて いるんだ。

ぼくの ホープくん。

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